癒しを追及するカウンセラー・鈴木孝信の「心が強くなる心理学」

鈴木孝信が贈る、欧米の最先端心理療法に基づいた、読むだけで心が強くなる心理学情報ブログ

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東日本大震災の心のケア その3

   

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カウンセリングルーム

2011年7月2日
昨夜、避難所での深夜のカウンセリングで拠点には2:00AM頃、寝る時間は3:3:30AMを回っていたのだが、起きる時間はいつもと変わらなかった。ハエに6時ごろ起こされた。ボーとした頭をコーヒーで覚ましながら、昨晩の大雨が嘘だったかのような晴れ空に太陽がゆっくりと昇っていくのを眺めていた。今日は「カウンセリングルーム」でカウンセリングを一件予定していた。地震に恐怖し、そして津波に飲まれて死を覚悟した被災者のカウンセリングを。

The カウンセリング。カウンセリングらしいカウンセリングだった。はじめは緊張に意識を向けてた。きっと「はじめての人と会うから緊張をしている」というのは本人さえも気が付かない口実で、緊張の原因は別のところにあるのだろう。緊張が和らがないことに苛立ちを感じたのか、真夜中のカウンセリングの方と同様にやや怒り出されたような雰囲気があった。しかしそのおかげで話がより核心に向けて動き始めたようだった。津波の話に転じ、意識すると胸の辺りがググっと重くなると話された。それに意識を向けてトラウマの処理を行うと「思い出しても感じなくなった」と。トラウマケアが成功した。そしてその問題が取り除かれると、本当の問題に意識が動いた。その問題に対して傾聴的に話を伺い、共感し、問題解決のアプローチで関わると、問題解決への堅い決意をされたようだった。「本当に無料でいいのか?」と断る僕に何度も確認された様子が印象的だった。

午後は石巻を離れる準備をした。石巻ボランティアセンターは、市の中心部からやや離れた専修大学のキャンパス内にあり、ボランティア証明書を受け取ると、次に市役所へ高速道路無料交通の許可書を受け取りに行った。

2015年12月12日
4年半前を振り返り「一体自分は何をしたのか」という問いが浮かびます。現地では、ボランティアチームが、自衛隊が巨大なお風呂を提供していたし、炊き出しを提供するチームもありました。避難所の管理をするチームもありました。大規模な生存のための援助は、被災者の方の生を保ちました。僕は一体何の役に立ったのだろう。
個人が衝動に駆られて単身現地に赴き、全国からの物資支援から食べ、住めなくなった誰かの持ち家に無償で泊まり込み(もちろん許可を得ています)数日間、全国民が注目を集めるその場を見るという社会見学をして、非日常という気晴らしを体験した。ヒロイズムに浸りたかっただけなのでは。一体僕は何をしに行ったのだろうか。僕は役に立てたのだろうか。僕はその場でいてもいなくてもさほど変わりのない存在だったのだろうか。

被災地でたくさんのものを見聞きした、その時を被災者の方たちと共有した責任が僕にはあります。何をしに行ったのか、の意味はこれからの僕の行動によって、僕が形作っていく。「それには意味がなかった」で僕の人生が終わるのか、「それが糧になってより多くの苦しむ人たちの援助をした」で終わるのかは、この経験を今どう捉えていくかによって決まってくるのだろうと思い、体験したことを忘れずにいたいと思っています。

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