癒しを追及するカウンセラー・鈴木孝信の「心が強くなる心理学」

鈴木孝信が贈る、欧米の最先端心理療法に基づいた、読むだけで心が強くなる心理学情報ブログ

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僕たちが(睡眠時の)夢を見るわけ

   

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昨日は久しぶりに大雪の東京でしたね。雪化粧とはよく言いますが、まったく白で覆われた街並みは、普段と雰囲気が違ったように感じられ、とても上手い言葉だなと感心します。こういった特別な体験を日中にすると(睡眠時の)夢に見る、そう言われています。特に怖い思いをすると「夢に見そう」なんて普段から言いますね。そんな夢をテーマにした、一見カウンセリングに関係なさそうだけど、とても関係があって、とても興味深い記事を見つけたのでご紹介します。

https://www.psychologytoday.com/blog/supersurvivors/201801/do-dreams-really-mean-anything

なぜ夢を見るのか。考えただけで面白いですよね。昔の人は、夢には何か超自然的で神秘的な意味合いがあると考えていたようです。心理療法の父と呼ばれるフロイトが現れると、夢にはもっと別の個人的な意味があるように考えられ始めました。つまり、無意識の葛藤が夢として表れるという考え方です。夢については、まだよくわかっていないこともあり、フロイトの考えは現代でもポピュラーな考えとして浸透しています(夢診断だとか夢占いと検索すると、興味をそそられるようなサイトが沢山ヒットしますね)。フロイトの例で言うと、水の夢を見たら、それは羊水の象徴であって妊娠に関連する心の表れである、そういった類の考えです。

近年になると、学問レベルでは別の視点も考えられるようになりました。例えば、夢は記憶を固定化(consolidation)するための活動に関連して見えた(体験された)もの、またただランダムな脳活動が反映されたもの、だとかです。いずれも夢の内容自体に意味を見出さない考え方で、それらは産物として「ただ見えた、ただ感られた」だけと、フロイトの流れの考え方を否定するものです。そんな中で、心理臨床経験と一貫性のある考え方も注目されつつあるようです。それが「日中の体験を処理する脳活動に伴って起こるもの」(夢の神経認知理論)という考え方です。

覚醒時には、僕たちは様々な情報を内外から受け取って、その情報を処理します。慣れている情報(いつもと同じように過ごし予測できるようなことが起こる)は無理なく情報が処理されて行きますが、そうでない情報(夢見そうと思えるような怖い体験等)は情報を処理するのが簡単ではありません。そういった処理をするのが簡単ではないことが、夢の中で処理されていると考える説(夢の神経認知理論)です。日中にイライラする出来事があったり、不安に感じる出来事があったり、または怖く感じる出来事があると、嫌な夢を見るのはこのためだと説明します。そういった処理されていない感情や身体の感覚が寝ている間に処理され、夢の中で(ストーリーは出鱈目だったとしても)その感情や身体の感覚がそこに現れていくという考え方です。

これは単に興味深い考え方であるという以上に、治療にも僕たちの日常生活にも応用される考えだと僕は思っています。例えば、僕自身の体験ですが、学生時代に統計学の難しい問題がどうしても理解できず、勉強している最中に知らないうちに眠ってしまったことがあります。10分程度で目が覚めると、なぜか不思議なことに、さっきまでの煮詰まった嫌な感じはなく、それどころか問題を理解出来るようになっていました。これを神経認知理論にで説明すると、その問題について処理されていない情報(感情的苦痛等)が処理され、より冷静に多面的に問題を見られるようになった結果、理解出来るようになったと解釈できます。例えば、統計学の問題ではなく、人生上の問題に悩んで問題が理解できない、解決策が見つけられない、という状況はどうでしょう? そういう時に人はセラピーを受けにきますが、そのセラピー最中に寝たらどうなるでしょう?

たまにカウンセリング最中に寝られる方もいるのですが、それがどうも役立っているようにも思えます。何か悩み事について話している最中(問題についてとても意識している最中)に眠ると、その悩み事についての情報が処理されて、新たな視点が見えてくる。悩みに対して違った見方が出来、理解出来、解決策も見えてくる。カウンセリング中に寝てしまうというのは極端な話にも思えるかもしれません。多くの方は覚醒しています。ただ覚醒していても、脳が「寝ているのと似たような状態」になっていたらどうでしょうか? やはり同じようなことが起きるように思えるのです。

僕が得意としている心理療法「ブレインスポッティング」は、相談者の方の脳の状態を把握して、それをセラピストが密に調整する(ここがセラピストの腕の見せ所です)ことによって「最適の処理」あるいは「癒しの処理」を起こす方法です。それによって、相談者の方が自分の中から悩みに対する理解や解決策を見出すことを促進します。「あなたには何か欠けている。だから新しいことを学びましょう」というスタンスではなく「あなたはすでに(癒しに関しては)完璧です。条件さえそろえば。なのでその条件をそろえましょう」というスタンスを取るので、幅広く受け入れやすい方法として、多くの相談者さんは感じていらっしゃいます。

 

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