「安心の音」の仕組み
東京多摩ネット心理相談室で実施し始めた「心身の音」について研究を続けています。まだ僕自身が被験者となりデータを集めているだけでありますが、すでに一貫した傾向が見られています。
①何もしない
②癒し系の音楽
③「安心の音」
この3つで、どう「身体」と「脳」が働くかを調べています。少し専門的に言うと、健康指標と呼ばれるHRVの1つの指標であるRMSSD(身体)と脳の基本的な働きで心のケアにおいて重要なDMN(脳)が「どう動くか」を比較しています。
現時点では、「安心の音」は「変化を起こす」のではなく、「変化を支える」機能があるのではないかと思えています。当初は「どの刺激が最も脳や自律神経を活性化させるのか」という視点でデータを見ていました。しかし解析を進める中で、少し違う可能性が見えてきました。
それは、「最も変化を起こす刺激が、最も治療的とは限らない」ということです。
癒し系の音楽と安心の音との比較
癒し系の音楽では、身体と脳の状態が大きく変化し、様々な状態を行き来する傾向が見られました。これは新しい可能性を探しているような状態です。
一方で「安心の音」では、状態の変化そのものはそれほど大きくありませんでした。しかし興味深いことに、その状態では「崩れても戻る」というパターンが繰り返し観察されました。
例えるなら、癒し系の音楽は、一つは森の中を自由に歩き回りながら新しい道を探している状態。安心の音は、安心して帰れる家を持ちながら散歩している状態です。どちらも価値があります。しかしトラウマケアという視点では、後者が重要になるかもしれません。
トラウマ治療に必要なのは「揺らぎ」だけではありません。トラウマを抱えた人の神経系は、もともと過敏になっていたり、逆に感覚が麻痺していたりすることがあります。そのような状態では、さらに大きな刺激を加えて変化を促そうとすると、かえって圧倒されてしまうことがあります。
そのため治療では、「どれだけ大きく変化するか」よりも、「変化しても戻ってこられるか」が重要になります。
安心できる環境の中で少し活性化し、そして自然に落ち着いていく。この往復運動こそが、回復の土台になるのです。
「安心の音」が提供しているもの
現時点のデータから考えると「安心の音」は、人を強く興奮させたり、無理に感情を動かしたりするものではないように見えます。
むしろ、「大丈夫、戻ってこられる」という感覚を神経系に与えている可能性があります。
それは:
・緊張しすぎない
・感覚が閉じすぎない
・必要な時には反応できる
・反応した後には落ち着ける
という状態を支える働きです。
引き続き研究を続けていきたいと思います。
