電車の中でやってはいけないことをしてしまった（トラウマ処理の話）
面白画像を検索し始めてしまった。
そして見つけたのがこれだ。
色々な意味でツボにはまってしまい、見た瞬間まず吹き出しそうになった。両隣には若い女性が、幸い音楽を聴きながらスマホをいじっている様子に多少の安堵感を感じた。けれど、第2波、3波と吹き出しの衝動がたたみかけるように襲ってくる。多少吹き出しながら、咳払いなどで上手くかわした気になりながら、そしてとても焦りながら、とことん堪えた。冷や汗が額に浮かび、背中を流れ落ちるのを感じる。こういう時ばかりは、冬の京王線の暖房が恨めしく感じる。
正面の女の子に気づかれまい様にと、後ろの風景を見ているかのように振る舞う。そこには尿意を我慢するのにも決して引けを取らない程度の苦しさが確かにあった。
ドラえもん（？）は振り払おうとも、意識に駆け寄ってくる。波を乗り切ったと思ったら、不意に駆け寄ってくる。こういった波が10回以上続き、何とか停車駅に着き、逃げるように電車を飛び出た。そう、駅に着くたびに、隣の車両、隣の車両へと移動してもいた。出来るだけ人がいない車両を求めて。
駅からしばらく目的地まで徒歩の時間があるが、波は引き続き襲ってきた。これ程意識を苛む注意の対象、駆け寄ってもらいたいけど駆け寄ってもらいたくない、そんな注意の対象は、近年まれだ。瞑想中ですら、ここまで強烈に僕の注意を引きつけるものはない。
やっとのことで、人が全くいない通りまででた。僕はあえてドラえもん（？）を意識に招き入れてみた。牛乳を口に含んでいたら、間違いなく、鼻からもシルク色の液体が勢いよく噴き出ただろう。せき込むように吹き出す。そして笑いがこみ上げてくる。誰もいないのを良いことに、僕は声に出して笑ってみた。すると、お腹、のど、顎、顔面、内臓、そして身体中の筋肉にあった緊張が解き放たれたように感じた。体がすぅーっとした。2・3度ドラえもん（？）を招き入れると、笑いを誘うドラえもん（？）はもう駆け寄ってきてはくれなかった。凛々しく、静観な顔つきで、必死に何かを成し遂げようとひた走る、青い人の姿がそこにはただあった。
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電車の中で、駅前の商店街で、笑いを堪える中に、実行されない予定がそこに留められていました。それは可笑しさのあまり、吹き出して声を出して笑う、という行為です。でもそれが我慢され、実行されなかった。すると、脳の中には「実行されなかった予定」というプログラムだけ残ることになります。この「実行されなかった予定」は、脳の中にずっと残り、何かしらの理由でそこに電気が流れ活性化すると、その予定が実行されます。電車でつり革広告に揺れる本物のドラえもんのイラストを見た瞬間、予定が活性化され、訳も分からず可笑しくなって吹き出したり、声を出して笑ったり。笑いで言うと、こういった「実行されなかった笑い」の集合が、いわゆる「笑いのツボ」であると僕は思います。
笑いであれば、それは生活に支障がでるようなことではありませんが、例えばそれが「死の恐怖」を味わうような体験をした場合、もっともっと問題となります。いわゆるトラウマ体験がそれにあたるかもしれませんが、目の前で、車と車が衝突するという交通事故が起こる瞬間を見てしまった場合を例にとりましょう。大抵の人は、大きな恐怖が生じる場面では、あまりにも強大な力に対しては無力に感じ、固まります。身動きが取れなくなる、頭が真っ白になる、等体の機能が低下します。その時、害を受けないために、その場から「逃げる」という行為が必要になってくるのですが、固まってしまうため足が動きません。足を動かすために血流を良くするための心臓も早く動きません。逃げるという行為に必要な体の動きが、固まってしまってないので、逃げられないのですが、これが「実行されなかった予定」を脳の中に作り出していきます。逃げるために必要な自律神経の高ぶり、ホルモンの放出、筋肉の動き等は瞬間的に特定されるのですが、それがなされる予定だけ脳に留まってしまうのです。その予定が、何かしらの理由で活性化されたとき、予定の実行が行われていきます。道路を前に、そこに無数の車が通りすぎるのを目の当たりにしただけで、動悸がし、足がすくみ、恐怖を感じる、等です。
この「実行されなかった予定」を、それ自体に反応することなくコントロール下におかれた状態で実行させていくと、その予定が終了していきます。すると、もう何かしらの理由で活性化することがなくなるのです。これが「トラウマの処理」であり、脳神経学の英知が生み出した、人間が自身の過去を克服していく方法なのです。