癒しを追及するカウンセラー・鈴木孝信の「心が強くなる心理学」

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ロッキー・バルボアはなぜアメリカン・ドリームを勝ち取れたのか?

   

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ロッキー・バルボアとは、今年「クリード」で7作目となった、ハリウッドのメガヒット映画作品「ロッキー」シリーズの主人公ですが、3流のボクサーだったロッキーが、チャンスを手に取りヘビー級チャンピオンにのし上がる成功話です。このロッキーに、人間の可能性を感じるのですが、それ以上にこの成功を可能にしたのは、ロッキーのトレーナーたちに他ならないと僕は思っています。どの作でも(5作目と7作目ではロッキー自身がトレーナー)優秀なトレーナーの下でプレーヤーはトレーニングを重ね、その都度必要な素質が開花されていきました。そのトレーナーたちが素晴らしいところは、プロとしての正しく導く能力(経験や知識)だけでなく、プレーヤーの全面的な信頼を得ているというところです。

ロッキー・シリーズでは、当然のことですがトレーナーとプレーヤー役にはそれぞれの役者がついています。ちょっとびっくりする考え方かもしれませんが、このような2人は、実際は1人の人間の中に存在します。その人の別々のパーツ(部分)だと僕は思っています。つまり、誰にでもトレーナーの自分とプレーヤーの自分がいるということです。きっと脳の活動パタンの異なる「状態」の違いだと思いますが、それらは時に、それぞれの人格を持つかのようにも思われます。そしてこれらは、スポーツの分野にだけでなく、人生をどう歩むかという意味で関係してくると思っています。

ロッキーの成功で見られるように、このトレーナーとプレーヤーがお互いを信頼し合っている場合、最適なパフォーマンスが引き出されるのでしょう。プレーヤーの状態をトレーナーが良く知っているので、プレーヤーに対して(目標を達する上で)最適な判断をします。例えば、スポーツで言うと、足を痛めているので、トレーニングを軽めにする判断をして、実際にそうする、などです。また一般的な社会生活で言うと、寝不足で疲れているので、仕事や勉強、また予定を早めに切り上げる判断をし、それに従うなどです。そもそも両者とも1人の人間の中にいる違った部分なので、その人の知識を共有しているので、信頼関係にある両者の間では、トレーナーは共通の目的を達成するための最適な決断を出来ますし、正しく理解されているプレーヤーは疑わずそれに従います。

しかし、トレーナーの主張が強すぎたり、またプレーヤーのそれが強すぎるとバランスは崩れます。スポーツで言うと、プレーヤーに無理強いをして体を壊させるトレーナーだったり、また怠惰過ぎてトレーナーの言うことを聞かず練習をしないプレーヤーだったり、また社会生活で言うと、勉強ばかりさせようとするトレーナーとそれに従って欲求の満たされないプレーヤーだったり、トレーナーの適切な正論に「理解されていない」と反発をして、意欲を失って仕事や勉強のパフォーマンスが下がるプレーヤーだったりです。

メンタルケアの話で言うと、自分の中のトレーナーとプレーヤーの関係は、とても顕著な問題になりかねません。うつ病を患う多くの方が、いわゆる「完全主義」の尺度で点数がとても高くなり、頭でっかちで正論で固め、押しの強いトレーナーと、ナイーブで従順すぎ、我慢強いプレーヤーが心の中にいることが多いようです。そのトレーナーは相手のことをあまり考慮せず自分の「方法論」を実践さえすれば必ず成功する、と自分の意見を押し付ける指導者(教師、コーチ、色々な先生、医師、セラピスト)にも似ています。トレーナーが他人なら、自分のことを完全に知ることが出来ないので、そういったごり押しを「能力のなさ、未熟さ、失敗」として受け止めたり、反発したり、離れたり(解雇したり)出来ますが、そういったトレーナーが自分の中にいると、どうしようもありません。自分の状態や状況を良く知っているはずの自分が、自分に無理のあることを要求し、それに従うからです。

こういった方には、公平に物事を判断してくれる第3者の存在、そして自分の中のトレーナーとプレーヤーがじっくり話し合える環境が必要です。それは言い換えると、感情を語れる安心・安全の空気と、自分の中のトレーナーとプレーヤーの対話をじっくり見つめられる余裕が提供される環境です。それがカウンセリングの場だと僕は考えています。この場で、トレーナーやプレーヤーは(もしあるなら)自らの過ちを認め、お互いのそんな姿を見て、お互いとの関わり方を変えて、お互いの目的を達成できるよう協力していけるプロセスが起きる、これがカウンセリングだと僕は思っています。

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