癒しを追及するカウンセラー・鈴木孝信の「心が強くなる心理学」

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ポケモンGOはうつの良薬?

   

pokemongo

今大ブレークの「ポケモンGO」。
日本でも配信されてから、3日間で1000万ダウンロードを越えたという驚異的な人気です。
僕もプレーしていますが、これはハマります(^^

ところで、先駆けて配信された米国ではとても興味深い現象が起きているようです。
それは「ポケモンGOをプレーしてうつ病が良くなっている」というような現象です。
それについて論じた海外記事はたくさんあるし、日本の記事(それらの翻訳)はあるので、僕なりの視点で考えを述べたいと思います。

色々な見方があると思いますが、ポケモンGOは、少なくとも5つの理由からうつ状態に効果があるのではないかと考えます。それらは①行動が増える②達成感を得る③存在する理屈を見出す④考えこむことを止める⑤つながりを持つ、です。1つずつ簡単に述べます。

①行動が増える
うつ状態はやる気が落ち行動が減っていくことが頻繁にあります。そのため、行動を少しずつしていくことで、そこから得られるものを得ていくという「行動活性」という治療法もあります。ポケモンGOにはこの「行動活性」の要素はありそうです。プレーしてポケモンを集めていきたいという基本的な欲求があれば、億劫であっても外に出ないとなかなかそれは成立しません。またポケモンを捕まえる際の道具も(課金で手に入りますが)「ポケストップ」と呼ばれる特定の場所(公園、記念碑、駅等)に行かないと手に入りません。またたまに手に入る「ポケモンのタマゴ」は歩くことで、GPSでそれをモニターし、その距離によってふ化するという設定になっています。つまり、外に出て歩く理由が沢山あり、その動機をポケモンGOは与えてくれます。
実際プレーしてみて、朝の散歩に出かけたり、ちょっとコンビニに行ったりと自然に行動が増えていることに気が付きました。この良いところは「治療のために好きでもないのに動く」ではなく「好きで動いた結果治療につながる」という点です。これは人生を通じてのレッスンにすらなるでしょう。

②達成感を得る
行動が少なくなると、何かが達成されること自体が難しくなります。うつ状態に悩む方は、高い理想を掲げがちで「毎日10分歩くこと」等と目標を設定するものなら「そんなこと誰でも普通にすることで当たり前なんだから、出来たって達成感を感じない」と返ってくることも稀ではありません。ポケモンを捕まえるという作業は、とても簡単なことですが、きっとそこに楽しみという要素があるので、達成感を感じやすいのではと考えます。特に「レア」なポケモンを捕まえるということは(誰でも出来ることであっても)偉業であるように感じられ、大きな満足感につながることは想像出来ます。
実際プレーしてみると、少しでもレアなポケモンを捕まえたりふ化させたりすると、たんなるゲームのデータではありますが、高揚感を感じ、それがしばらく続くことに気が付きます。

③存在する理屈を見出す
行動が減り物事が達成されなくなってくると、自分の価値感さえ危うくなります。うつ状態の方は良く「何のために生きているか分からない」と自己の価値を見失うことも稀ではありません。そんな中で、ポケモンGOは一時的であっても、何か「ハマれる」対象になる可能性があります。つまり、ポケモンを集めること、そのために色々なことをする(ポケストップに行ったり、歩き回ってポケモンと遭遇したり、またタマゴをふ化させたり)ことで、ゲームではあったとしても、なぜ生きているのか?という自問の答えとなる理屈が成立します。これは根底にある不安を和らげてくれる効果が期待できるように思えます。
実際にプレーしてみて、ポケモンを集める人というアイデンティティが自分に付け加わった気がします。もちろん、そのために生きるという訳ではありませんが、自分の価値を見失った人にとっては、それは「ないよりまし」以上の効果があるように感じました。

④考えこむことを止める
うつ状態の人で頻繁にあることが、悪いことや不安なことを考えこむことです。これは「反芻」と呼ばれ、うつ状態が続く1つの理由とされています。活動量が減ったうつ状態では、目の前にあるすべきものが減っている状態なので、どうしても自分の中の未解決な問題に目が向き、それに手を出そうとしてしまいます。頭の中で起きている嫌な考えに向く意識を、別のもの(ポケモンGOでポケモンを捕まえるためにすべき一連のこと)にシフトし、それで脳を使うことで、よりバランスよく心身が働き反芻を抑えることが出来るでしょう。
誰でも悩みの1つや2つはあるもので、僕もそうですが、そういったことが自然に浮かんできてしまうシャワーやお風呂の時間でも、モンスターボールがなくなったことが気がかりに感じていたり、どうやってより良くプレーしていけるかという計画を立てている自分に気が付いています。

⑤つながりを持てる
うつ状態はとても孤独な状態です。あたかも自分だけが世界中の苦しみを負っているかのようにも感じることがありますし、活動量が減っていることから、外の世界の中で活動することが減り、そのため自分と自分以外の全てを切り離して感じてしまうこともしばしばあります。どうせ誰も自分を理解してくれない。そんな心境に入ってくるポケモンGOは、他のプレーヤーと自分を関連させてくれます。自分と同じ様に苦しんでいると思える人はいないかもしれないけど、自分と同じ様に楽しんでいると思える人はいる。自分だけじゃないんだ、という気づきは、うつ状態から脱していくためにとても大切なものです。
自分がプレーしていない時であっても、目に入ってしまった他人の携帯画面がポケモンGOだと、つい嬉しくなります。同じ興味を共有している相手として捉え、仲間意識がつい出てしまいます。

以上、ポケモンGOはうつ状態の改善に期待できるのではないかと私見を述べてみました。
熱中症や熱射病に気をつけ、また交通者や自動車に気を付けてプレーを楽しみましょう(^^

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