心拍変動のLF/HF成分は心理療法の有効度を示唆する指標となるか?
2015/11/13
(2011年記事のリライトです)
東日本大震災を受けて、物資やライフラインの回復に伴い、心のケアが重要課題となってくることが予測されています。ということで、死に直面するストレス(いわゆるトラウマ)の影響に対して高い即効性と治療効果が知られているTFT療法について、実体験を踏まえてご紹介したいと思います。
TFT療法はまだあまり知られていない心理療法ですが、東洋医学と科学アプローチが産み落とした(僕が理解する限りでは)最大の対象幅と即効性、そして治療効果を持ち合わせる心理療法です。この方法を僕はここ2年ほど専門で使っており、臨床的な経験からもその素晴らしさを実感しています。
一方、輸入された本で紹介されている程の成果は、少なくとも僕の臨床では挙げられていません。僕の知見では、輸入もとのアメリカと日本の人間の根本的性質の違いが大きく関係しているように思えます。アメリカでTFT療法を試したときは、クローン病を患い、朝から酷い腹痛に悩んでいた方に対してたった1連の試みで、完全に腹痛をなくしてしまう程でした(その他にも不安に対して取り組み、それも完全になくしました)。
もちろん、日本でも驚くべき成果をあげたことは幾度となくあります。過去のトラウマを完全に克服する。パニック発作を止める。長年続いた一過性の過眠を完全に止める等など。一方で、あまり効果が認められなかったケースも少なからず体験してきました。それらを分析してみると、いかにも日本人らしい気質のゆえんではないか、そういった仮説を今のところ立てています。
具体的に言うと、TFT療法の効果を客観的に測る目的で使用している心拍変動(HRV)(HRVについてはこちらの記事を参照してください)の数値とTFT療法の効果(そして他の心理療法でも)があまりみられない方の性質が偶然にも重なる場合が多いことに気が付いたのです。
HRVでは、いろいろな成分を参考にしますが、特に国際的な研究では頻繁に研究されているLF/HF成分(自律神経のバランスを示唆する)を臨床的に意義のある数値の1つであると考えて、活用しています。この数値は、簡単に言ってしまうと心身を覚醒させる交感神経と心身を休める副交感神経のバランスを数値化したものであり、1~2の値が健康的であると言われています。
多くの患者さんや相談者の方たちは、この数値が2以上(大きい場合には20を越す場合も)であり、休んだ状態で測定しているにも関わらず、心身が覚醒している度合いが高いことが分かります。一方で、1を下回る場合を何度か体験したことがあります。ストレスフルな状況であったり、また身体症状がある等、問題があるのに(今まで考えられていた様な形で)バランスは崩れていない。そんな壁にぶち当たり、どう解釈していいのか迷っていました。
LF/HF成分が1を下回る場合と、その方たちの性質を思い返していくと、何かほとんどの場合にある共通点が見えてきました。それがその人の「日本人らしさ」です。僕がここで言う「日本人らしさ」とは、欧米人との心の構造を比較した上での特徴であり、一般的に「日本人らしい」と言われるものとはちょっと違うかもしれません。この概念が僕の中でも固まったわけではありませんが、大まかな特徴を挙げてみたいと思います。
①忍耐強いように見える
②他人の目・世間体が気になる
③気持ちを押し殺す対処方法を頻繁にする
④普段動じない様に見える
⑤自制を大幅に失うことがある(キレる等)
とこんな具合です。またこれは、もっと別の言い方をすると「解離」をしやすい傾向だとも言えます。特に幼少期に虐待、またはそれに準ずる経験、虐待と思えなくとも、両親の両方、またはいずれかが不安障害や発達障害、その他の心の病を持っている場合の不適切な関わりで、子どもは「解離」をして心を守ることを学びます。僕の私見では上記の「日本人らしさ」は限りなく「解離」に似ているのではと感じています。
東日本大震災を受けて、TFT協会でも被災地での援助を検討していると聞きました。上に挙げた「日本人らしさ」は偏見で大変恐縮ですが、特に東北地方の方に多いのではないかと思い、上手く心を紐解きながら、慎重なケアが必要とされると思います(TFT療法であったとしても他の方法であったとしても)。